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2018年11月27日
「悪い情報」をどう伝えるか――
「悪い情報」をどう伝えるか――
毎日新聞の精神科医の香山リカ氏のコラムから…
学びましたので共有させて頂きます。

初めて来た患者さんの話を聞き
「念のために体の検査もしておきましょう」と血液やCTの検査をし「結果は来週に」と帰宅してもらう。
次の週、待合室にその人が来る…
ロビーですれ違うと、初診のときより明るい顔をして
「クスリのおかげで眠れるようになったんです」と笑顔でいうので
私は「良かったですね!」と答え診察室に入る。

そしてパソコンを立ち上げ、検査の結果をチェックするとCTに気になる影が映っている。
内科医にチェックしてもらうと、答えは「あ、これガンの可能性ありますね。私の外来を受診するように言ってください」

私は重い気持ちになる。
この患者さんは穏やかな顔をしてロビーで順番を待っている。
睡眠もとれるようになり、私に感謝していた。

でも検査の結果はあまり良くない。
いったいどうやって伝えるべきか……

この「悪い情報をどう伝えるか」は医者にとっても最も難しい問題のひとつだ。
誰だって「結果は問題なしでしたよ」と「良い情報」を伝えて患者さんに喜んでもらいたい。
「先生のおかげです」と感謝してもらえれば、さらに嬉しい気持ちになる。

しかし、人間は生きていれば、いつかは「悪い情報」を伝えなければならないときもやってくる。
とくに私たち医者は「ちょっと良くない結果でした」「やっぱり入院しましょう」など
相手ががっかりするようなことを、話さなければならない場面が少なくない。

私の場合、そういうときについ早口になってしまったり、
「まあ心配はないのですが…」など自分を安心させる意味もあってか、
かれこれ前置きをしてしまったりすることもある。
もちろんこれは良い伝え方ではない。

大切なのは真剣だけれど悲観的になりすぎない表情で、ゆっくりと落ち着いて、
「お伝えしにくいことですが、今回はこういう結果でした」と告げ、
それから「私でよければ一生懸命、治療に協力させて頂きます」と一緒に頑張ることを伝える。

患者さんの意思は尊重するが「あとは自分で決めてください!」と“自己責任”を強制してはいけない。
これは医療の現場に限ったことではないだろう。
家族に同僚に友達に、相手が喜ばない話をどう伝えるか。

そういうときこそ、自分の人間性と相手を思う気持ちが試される。
それがたとえ「悪い情報」であっても、相手の目を見て、しっかり伝えるようにしたいと思っている。

<日野原先生の言葉から…>
医師は患者を背負っていると思っているかも知れないが、
背負われた患者と医師との間には、真の意味でのコミュニケーションがないのである。
患者の前で首をかしげたり、助手に患者のわからない言葉でささやくことも慎むべきである。
医者の一挙手一投足が、患者には極めてクローズアップされ、重大な意味をもつ。

臨床医の仕事の中で一番難しいことは、
病気を治せる科学の武器がなくなってしまったときに、どう患者に対応するかということである。
医学や看護をいくら学んでも、科学だけでは対応できない時期が必ずくる。
医療者は、人間理解の学問にも通じなければならない。
できるだけ多くの、いろいろな社会的、経済的条件下の人々に出会うことによって、
そのような人々を理解し、またいろいろな事態に対応していける職業人にならなければならない。

<医療者の人間性>
医療従事者には、知識も必要であり、高度技術も必要である。
しかし、病む人間に接する中で身につけなければならないものは、
人間にしかない知恵と心温かく共感性の豊かな慈悲深さを持つ「人間性」である。
この人間性は、医学の講義からは学べない。
病者やその家族、さらに地域社会の困難な問題に触れることから育まれる。

<医療の美しさ>
人間の心の通っている医療には、ある種の美しさがある。
患者と医師との間に、本当に共感できるものがあるかどうかが最も大切なことである。
自然科学を基盤とする近代医学は、医の心を遮断し、患者、家族、医師、看護師の間のコミュニケーションを失った。
それを取り戻す技術、失われたものを回復する術をアートと呼びたい。

これらの言葉を心に刻んで診療に当たっていきたいと思います。
多くの来院される皆さまの信頼を裏切らない診療をして参ります。