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2017年12月22日
がん検診最新事情(4)〜胃がん編〜
がん検診最新事情(4)〜胃がん編〜
日本のがん検診は「胃がん検診」とともに始まって非常に長い歴史を誇っています。
ですが今、大きな環境変化を迎えています。
胃がんの罹患率の変化、並びに受診者の高齢化、受診率の低迷など…いろいろな課題が見えてきました。
今後、近未来に胃がん検診がどのような方向になっていくかをお話ししたいと思います。

1981年にがんが死因の第1位になり、現在では、3人に1人ががんで死亡しています。

また、がんと一言で言っても、年代によって罹患や死亡の数・割合が変わってきます。
さらに罹患するがんの種類も、経年変化で見たときに、どのがんが増えてどのがんが減っているのか、
それによってどのがんにウェートを置くかが異なってきます。

また、バリウムから内視鏡などへの検診機器の技術革新といった要因も絡んできます。

さらには、検診によるがん死亡率減少という利益と
検診に引っかかったことによる不必要な検査・検診に伴う偶発症・過剰診断などの不利益、
そのメリット・デメリットをどう天秤にかけるのかということも大切です。

平成27年9月に行われた
「がん検診のあり方に関する検討会中間報告書(抜粋)」によると…

*胃がんの罹患率・死亡率は減少し、そのリスクであるヘリコバクター・ピロリの感染率も減少傾向にあることから、
胃がんの状況は、胃がん検診を導入した当時に比べ大きく変化しているといえる。
こうした状況とがん検診の不利益とのバランスを考えた場合、
40歳代のものに対して、対策型検診を継続する必要は乏しく、
胃がん検診の対象年齢は50歳以上とすることが妥当である


との提言がなされました。

がん検診には利益のみならず不利益もあり
検診間隔の短縮により、検査そのものの侵襲性に伴う偶発症 (胃部X線検査に伴う被曝や胃内視鏡検査に伴う穿孔等)や、
検診・精密検査の費用の増加等についても留意すべきである。

*検診間隔に関する科学的根拠、受診率への影響およびがん検診の利益と不利益のバランスを踏まえ、
胃がん検診の受診間隔については、現在の逐次実施から隔年実施とすることが妥当である

<バリウムか内視鏡か?>
石川県金沢市の胃がん検診では、従来のバリウムによる胃がん検診に加え、
平成20年から内視鏡検診(個別)を導入し、その成果を見ると年々内視鏡を選択する人が増加し、
昨年度は、9割の方がバリウムではなく内視鏡を選択している。

胃がん発見数は、平成20年度〜28年度までで、
バリウム(X線):65件
内視鏡:302件
内視鏡での発見数は、バリウムの4.6倍となっています。
(但し、内視鏡は早期発見例も多いが、過剰診断の可能性も考慮に入れる必要があると考えます)

<バリウム検診の問題点>
今まで永年行なわれてきたバリウム検診には、昨今次のような問題が指摘されています。

初回発見がんは30%だが、継続受診での発見率が70%にも及び、
バリウム検診を毎年受けていても、胃がんの発見率が減らない、どころかむしろ増えている。
胃がん発見症例をさかのぼって見直すと、1〜3年前に発見可能であった例が27%もあった。
つまり見逃しが多いのではと考えられ、それがバリウム検診の信頼性の低下につながっており、
現時点では、内視鏡を選択する人が9割にのぼっている。

バリウム検診を毎年ではなく、2年に1回にすることが検討されているが、そうした場合、
検診を受けない中間期に胃がんが発見される例や進行例の発見が 2.2 倍 になるという試算がある。
(毎年:5.1人/1万人 2年に1回:11.9人/1万人)また、5年生存率にも差が見られている。

<今後は胃がんリスクの層別化へ…>
胃がんの確実なリスクとしては、ピロリ菌感染や萎縮性胃炎が挙げられているが、
今後は、このリスクに応じて胃がん検診を行なった方が良いのでは…という議論が進んでいます。

一方で、若年者の人はピロリ菌感染率が非常に低下してきており、
低リスクの人には無駄な検査をしないで、検診の不利益を避けるべきではということが言われています。

世界的に見ても、日本はピロリ菌感染の低下に伴い、胃がんの罹患率が以前は世界一と言われていましたが、
現在では、3位になっています(1位は中国)。
胃がんの死亡数ももう既に減りつつあります。発生数もプラトーになって減り始めているような状況にあります。
特に、60歳以下の人は、もう増えていなくて減りつつあります。
増えているのは70歳、80歳の高齢者であり、胃がんは高齢者のがんになってきているのが明らかです。

2016年の World Cancer Research Fund の 最新評価によると、
胃がんのリスクを確実に挙げられる要因とされているのは、ピロリ菌喫煙です。

ピロリ菌感染は、その殆どは、5歳未満の時期に感染が成立すると判明しており、
子供の頃の衛生環境の影響を受け、最近は年齢ではなく出生時期によって感染率に違いが出てくるということが判ってきております。
1980年の生まれですと感染率は10%を切ってくる。2000年以降の生まれは5%未満しかありません。
喫煙率も年々下降傾向にあります。

ですから、日本人の胃がんは20年後には全世代で低下し、近い将来には「胃がんはとても稀ながん」になって行くかもしれません。

近未来の胃がん検診、ピロリ菌感染率の高い高齢者の世代を重点的に行なっていく、
胃がんのリスクの高い萎縮性胃炎の拾い上げを行うために、
75歳以上の方に採血だけで済むペプシノーゲン検査を取り入れて
異常があれば、内視鏡を行うという流れが検討されています。

参考文献:
2017年度がん征圧全国大会記念シンポジウム
「胃がん検診〜近未来のあるべき姿」
対がん協会報,657号増刊.平成29年12月.