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2017年3月21日
<めまい>について(2)
<めまい>について(2)
めまいには、ぐるぐる回る回転性のものとふわふわとした浮動性のめまいがあります。
一番多い頭を動かしたときに生じる回転性の「良性発作性頭位めまい(=BPPV)」
耳鳴りや聞こえが悪くなる聴力低下を伴う「内耳性めまい」(=回転性)
そして、立てないほどの激しいときは、危険な「脳梗塞や脳出血」の中枢性めまい(=浮動性・回転性)を疑う必要があります。

さらに最近、第4のめまいとして「頸性めまい」が言われています。
めまいに悩む方の参考になれば幸いです。

<繰り返すめまいは「首」を疑え!>
〜肩や頸部への負荷で発症する「頸性めまい」〜

なかなか治らないめまいの中に、頸部脊柱管狭窄症などの頸部疾患を背景に発症する「頸性めまい」が多く潜んでいることが分かってきた。
頸部への負荷が発症の引き金になるため、生活習慣の修正や筋弛緩薬の投与で症状を改善できる。

「何度も再発する難治性のめまいでは、首の疾患を疑った方が良い」
たかはし脳外科皮フ科(新潟県新発田市)の高橋祥先生はこう指摘する。

高橋先生によると、2013.6〜2014.9までに受診した1,000人のめまい患者のうち、90%(899例)が「頸性めまい」だったと報告した(日農医誌 2016;65:15-24.)。

「頸性めまい」とはどんなめまいなのか?
実は疾患概念が初めて示されたのは、1920年代と古く「“頸部関節炎”によって誘発されためまい」と報告されている。
その後、1988年には日本平衡神経学会が「頸部の回転または伸展によって起こる各種のめまい」
「一定の頸部運動により反復性に起こり、その頸部運動を継続すると次第に減弱することが多い」
「頸部以外にめまいの原因となる障害が認められない」という病歴などを満たす場合、頸性めまいを疑うという考え方を示している(小松崎ら Equilibrium Res.1988;47:245-73.)。

頸性めまいの発生メカニズムはよく分かっていないが、肩こりと表現される頸部筋群の異常緊張の情報と他の前庭中枢への情報のミスマッチからめまいを生じる説や、
頸髄に存在する前庭脊髄路や上行性神経路の脊髄小脳路が障害された結果という説などがある。

<首の負担のかかる習慣が引き金に…>
では、頸性めまいはどのように診断していけば良いのだろうか?

一般的にめまいを訴える患者を診察する場合、症状や病歴に基づき鑑別診断を進める。
まずは、脳血管障害に起因する「中枢性めまい」や虚血性心疾患などによる「血管性めまい」消化管出血や子宮外妊娠破裂などによる「起立性めまい」の可能性を考える。
「めまい」という症状の背景に見逃してはいけない重篤な疾患があるからだ!

重篤な疾患に起因する可能性が低ければ、良性発作性頭位めまい症 (BPPV) やメニエール病などの「末梢性めまい」を念頭に鑑別していく。
これらの「末梢性のめまい」の中に「頸性めまい」が紛れ込んでいると高橋先生は指摘している。

「頸性めまい」の特徴は
(1)頸部の過伸展や過屈曲の動作を長時間継続することで肩や頸部に負担がかかるか、頸部外傷歴があると発生する。
(2)反復性がある。
(3)主として浮動性めまいだが、ときに回転性の場合もある。
(4)頸部以外にめまいの原因となる障害が認められない。

こうした症状が認められれば「頸性めまい」を強く疑う。

そして頸部の過緊張状態を緩和する治療を行うことで症状が改善したら頸性めまいだと考えて良い。

実際の診察場面では「フラフラするめまいか、グルグルするめまいか」という質問に始まり、
脳血管疾患や耳鼻科疾患を除外するために「頭が痛かったり、重かったりしませんか?」
「耳鳴りや耳の調子がおかしくないですか?」と患者に問う一方で、必ず肩こりの有無を確認する。
人によっては肩こりの重症度の受け止め方が異なるため「肩こりはない」という患者にも「首や肩が重いようなすっきりしない感じはありませんか?」と質問する。

さらに、めまいが出現した時期よりも前に頸部を酷使したエピソードがないかを確認することも大切という。
「長時間パソコンを操作したり、ずっと下を向いて農作業や庭仕事をしていなかったか、工場の流れ作業やスマートフォンの操作で、長時間ずっと下を向いていたり、
不自然な姿勢でテレビを見ていなかったか、などと具体的に聞くと良いそうである。

二木・深谷耳鼻咽喉科・めまいクリニック(東京都江戸川区)の二木隆先生は「BPPVと診断し治療しても改善が認められないような患者に、過去に頸部疾患を指摘されたことがないか聞くことも重要だ」とアドバイスしている。

亀田総合病院(千葉県鴨川市)神経内科部長の福武敏夫先生は、問診で主に肩こりの5大危険因子を聞くようにしているとのこと。
(1)運動不足かどうか
(2)パソコンなどの姿勢の問題を抱えていないか
(3)ストレスで緊張することが多いかどうか
(4)首から上(目や歯)に悪いところはないか
(5)首から下(腰や膝)が悪くないか

これは浮動性めまいに肩こりを合併する症例を多く経験するからだ。

診断する上では、頸部MRI撮影も有用であるとのこと。
異常があるとは考えにくい外見であっても、頸部MRIでヘルニアや激しい変形が認められることがある。
生まれつき脊柱管が狭い人や、加齢によって頸・肩筋群の柔軟性がなくなった脊柱管狭窄症の人が、頸部に負担がかかるような体勢を繰り返しとることで「頸性めまい」につながることもある。
実際に高橋先生によれば頸部MR撮影した頸性めまい600人の約9割もに頸部脊柱管狭窄が認められた。

なお、二木先生によれば、BPPVやメニエール病に頸性めまいが合併するケースも多いことから、こうした患者でも頸部のエピソードを聞くことは重要であるという。

<筋緊張を緩める指導・治療を!>
頸性めまいの治療では、頸部の過緊張状態を緩和することを目標とする。
まず頸部に負担がかかる生活習慣を変えること、あるいは定期的に休息を取るよう指導することが重要だという。

薬物療法としては、筋弛緩薬が用いられる。
高齢者でなく筋緊張が強い場合は、テルネリン®︎1〜6mg/日。
高齢者で筋緊張が軽ければ、トルペリゾン(200-300mg/日)、アフロクアロン(40-60mg/日)。
それ以外では、ミオナール®︎(100-150mg/日)と使い分ける。

高橋先生によれば、これらの治療で9割以上の患者が1週間以内にめまいが消失したか緩和したそうである。
筋弛緩薬では転倒が懸念されることがあるが「注意深く処方することで、これまでに転倒した人はいない」そうである。

二木先生は、転倒などが心配な高齢者には、筋弛緩薬を処方せず鍼灸マッサージを勧めている。
福武先生は、肩こり対策としての運動療法やカプサイシン入りの温湿布を活用している。
また、首から上の虫歯治療や眼精疲労の回復、首から下の腰痛治療も考慮することもある。

参考文献:
満武里奈「繰り返すめまいは「首」を疑え」(日経メディカル, 2017年3月号.p14-5.)