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心筋梗塞、メニエール病、貧血、寝不足、風邪でも”めまい”を訴えることがありますから、
「めまい」というだけではよくわからないというのが正直なところです。
下手をすると検査漬けになって、医療費もバカにならないほどの高額になってしまいます。
「めまい」がどんな特徴を持っているのかをうまく医者に伝えられると、最短距離で診断に結びつくでしょう。
そのときは、めまいと一緒にどんな症状があったかーが大きな手がかりになります。
「めまい」は大まかに以下の3つに分けられます。
<1. 意識を失いそうなめまい (目の前が真っ暗になるような”めまい”)>
目の前が真っ暗になる感じで、冷や汗や動機を伴うことが多いものです。
立ち上がって数歩歩いたら、目の前が暗くなって、カーテンが下がるような感じになった、奈落の底に落とされるような感覚になった、といういわゆる「立ちくらみ」です。
知らないうちに体のどこからか出血していたり(消化管や子宮のことが多いです)、貧血になっていたり、脱水になっていることがあります。
薬の副作用やアルコールや発熱など体調の悪いときにも起こります。
また、心臓や血管(大動脈解離や肺塞栓)に問題があっても意識を失いそうになるめまいが出ます。
胸痛や背部痛、息切れがあったかどうかが重要な手がかりになります。
心筋梗塞でも「めまい」を訴える人がいるからなかなか臨床は難しいですね。
また、糖尿病や脂質代謝異常、高血圧、喫煙、片脚の腫脹、狭心症の既往、家族歴、高齢者など、リスクが高い場合は検査が必要になります。
<2. 回転性のめまい (ひどい乗り物酔いに似ためまい)>
世の中が流れるようになって立っていられない、激しい嘔吐を伴うという場合は”回転性めまい”といいます。
意識はなくならないのに、まっすぐには立っていられない、平衡感覚を失ってしまう”めまい”です。
多くは「内耳」という平衡感覚を司るところの病気ですが、小脳や脳幹という脳の異常でも起こります。
脳の障害による”回転性めまい”では脳神経症状が出ます。
「片手・片脚の力が入りにくい」「ろれつが回らない」「顔の半分がシビれる」「口の片方から食べ物がこぼれてしまう」「物が2つに見える」「物が飲み込みにくい」などです。
脳梗塞の場合、治療は時間との勝負です!
「寝ていれば治るだろう」とムダに貴重な時間を費やしてはいけません。
神経症状を伴う”めまい”は、4分の1が命を脅かす恐ろしい病態なのです。
頭痛を伴うと小脳出血のようなコワ〜い病気を考える必要があります。
とにかくグルグル回る”めまい”で、吐き気が強く、吐きまくるわけですから、患者さんは頭痛があったとは言えないこともあります。
一方、グルグルと回るめまいは、ほとんどが内耳の異常です。
耳鳴りや聴力低下があれば、脳ではなく内耳の異常である可能性が高くなります。
なかでも有名なのは、メニエール病!
この病気はストレスや体が弱っているときに聴力が低下し、耳鳴りも伴う”回転性のめまい”ですが、数時間でおさまることが多いです。
このようなエピソードを何度も繰り返すのがメニエール病の特徴なので、初めて”回転性のめまい”になったときには「メニエール病」という診断をつけてはいけません。
最初から「メニエール病」なんて診断したら、よほどの「名医」か「迷医」のどちらかです。
むしろ”回転性めまい”で最も多いのは、良性発作性頭位めまい症(=BPPV)です。なんか舌をカミそうな名前ですね!
これは、一定方向に頭を動かしたときだけ、グワーッと世の中が回転して、患者さんは激しく嘔吐します。
しかし、ジーッとしていると必ず1分以内に”めまい”が治ります。もちろん頭の位置を変えれば再び”めまい”が出ます。
頭を動かすたびに”めまい”がするから「ずーっとめまいが続いています」医者に訴えると、医者は分からなくなってしまいます。
「じっと動かないでいると数10秒〜1分でめまいが治る」と正確に伝えるのが大切です。
また、どの方向を向いたときに回転性めまいが出るのかをしっかと気をつけて見ておくといいでしょう。
これは聴力低下がないのが特徴です。
良性発作性頭位めまい症は、内耳の三半規管というリンパ液が充満している所に、
小さい石が落ち込んでしまい、特定の頭の位置にすることで、”ふわ〜っ”と石が流れてめまいを起こしてしまうのです。
なんと!この疾患であれば、問診と診察だけで診断でき、石を動かす体操で治ってしまうので、頭部CTなどは一切不要です。
体操をするだけで劇的に症状が取れるので、患者さんからはたいそう感謝されますが、点滴や飲み薬だけでめまいを散らそうとすると1〜2週間症状がダラダラと続いてしまいます。
<3. ふわふわめまい(足が地につかない感じのめまい)>
これはむしろ、慢性の経過を辿ることが多く、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、更年期障害、精神疾患、眼精疲労、神経筋疾患、電解質異常、あれこれ何でもござ〜れ!なんです。
じっくり腰を据えて、かかりつけ医と一つずつ疾患を探っていくしかないんです。
めまいは完全には消えなくとも「うまく付き合っていく」という選択肢もあるのです。
参考文献:
林寛之「医者でも間違える?!病気・ケガ・薬の新常識」(角川書店,2014.)