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2017年2月8日
がん検診最新事情(2)
がん検診最新事情(2)
読売新聞に垣添忠生先生(日本対がん協会会長・元国立がんセンター総長)が「これからの検診」と題して、寄稿しておられたのでご紹介します。
興味がある方は、お読みくだされば幸いです。

最近のがん学会では、研究者や医療従事者だけでなく、
がん患者や患者団体の参加も多かった。

社会に開かれたがん研究、がん診療という流れが最近の潮流である。

がん学会で繰り返し指摘されたことの一つに
「がん予防・がん検診」の重要性がある。

<難治性の膵がんに対する検診>
とりわけ「膵がん」に代表される「難治がん」にも取り組むべきだとの意見が多く出され、患者団体からの要望の声も高かった。

これを踏まえて垣添会長は、検診に関する「新しい技術開発の可能性」
「がんに罹りやすい人の絞り込み方(リスクの層別化)」
「高齢者のがん検診のあり方」
「検診後の患者のQOL (生活の質)や検診費用の問題」
などについて言及している。

日本では、胃、肺、大腸、子宮頸部、乳房の5つの癌に対する検診が自治体などで行われている。
だが「膵がん」は早期発見の方法がなく「進行がん」で発見された人のほどんどが1年以内になくなる。

致死性の高さからも「難治がん中の難治がん」として人々から恐れられ、死亡者も年々増加。
2015年には、35,000人とがん死亡の4番目になっていることから、早期発見の手法の開発が急がれる。

国立がん研究センターは「apoA2」と呼ばれる血液中のタンパク質が「膵がん」を早期に発見知るためのマーカーになることを発見した!

これを受けて、同センターと以前から膵がんの早期発見に取り組んできた日本対がん協会鹿児島県支部は、神戸大や横浜市大などと研究チームを結成した。
このマーカーの有効性を確かめる大規模な臨床研究を、早ければ本年夏にも始める予定である。

新しい検診方法が開発されれば、治療法の研究も進むと期待され、膵がんの治療体系も一変する可能性がある。

<今、注目されている検査法に…>
「リキッド・バイオプシー(Liquid biopsy)」がある。
がんを正確に診断するには、内視鏡や針を使って組織を取る生検を行う必要がある。
これに対して、がん細胞由来のDNA(デオキシリボ核酸)を血液や尿から検出する方法が、リキッド・バイオプシーだ。
細胞の遺伝子解析が安価で迅速に実施することが可能になったために登場してきた検査手法である。

がんと関連があるタンパク質を調べる従来手法に比べ、リキッド・バイオプシーはがん細胞そのものから出されるDNAを調べるので、早期に精度高くがんの有無をチェックできる可能性がある。
また、組織を採取する生検に比べ、患者の負担が少ない。様々ながん検診への応用が期待される。

<遺伝子解析などが進み、がん検診の手法が大きく変わる可能性がある>
がん細胞由来のDNAを検出する「リキッド・バイオプシー」により、
APC、KRAS、p53、などといった発がん遺伝子を調べることで、早期の大腸がんを病期 I 期でも、50%の確率で診断できるという。
従来の便潜血検査を補強できる可能性がある。

大腸がん、膵がん、胃がん、食道がん、乳がんなどでは、がんが早期から転移へと進むにつれて、
リキッド・バイオプシーによる検出率が向上することが報告されている。

子宮頸がん検診ではすでに、新しい手法が試みられている。
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染によって発生し、進展する病気だ。
検診では、子宮頸部の組織をとってがん細胞があるか調べる細胞診が行われる。
これに加えて、細胞診検査の残りの組織からHPVの遺伝子を検出する検査を行う併用法が新たに登場した。
この併用検診により、検診精度が高まる可能性が出てきた。

日本産婦人科医会は、この手法を推奨しており、今後2年以内に、子宮頸がん検診の指針が改定されるだろう。

がんを早期に発見する新しい手法の開発に加えて「リスク層別化」も重要である。
がんになるリスクの高い人は、しっかりと検診し、低リスクの人は緩やかに検診する、または検診をしない、という考え方だ。

検診の利益を最大化し、不利益を最小にする上で大切である。

良い例が、胃がんである。
胃がん発生には、ヘリコバクター・ピロリ菌の慢性感染でおこる萎縮性胃炎が大きく関わっている。
そこで、ピロリ菌の感染の有無と萎縮性胃炎の指標であるペプシノーゲンの測定値によって、リスクを層別化する。

胃がんについては、50歳以上を対象に2年に1回の検査が勧められているが、
ピロリ菌がなく、ペプシノーゲンの値も低ければ、検診間隔を延ばしてもいいかもしれない。
公的研究費による臨床試験が近く開始されると聞いている。

<高齢者のがんをどこまで見つけるか…>
がんをめぐる状況として最近、急浮上してきたのが、75歳以上の高齢者がんの増加問題である。
男性の平均寿命が80歳であることを考えれば、がんの発症年齢が寿命に近づいた高齢者の場合、多くのがんは積極的な治療の対象とはならない、とする考え方もあろう。
垣添会長は、そうするつもりであると言っている。

垣添会長は月に1度、日本対がん協会の「がん相談」を担当している。
そこで気がついたのは、相談者の年齢がいくつであっても、がんと診断されると患者も家族も必ず治療を強く希望することだ。

早期がんであれば、かなりの高齢者でも根治を目指した治療が可能である。
ただその場合でも、余命の短い高齢者において手術を受けることが、術後からの回復・療養生活という不利益を越えるだけの利益があるかを慎重に考える必要がある。

他方、進行がんであれば、患者、家族にとっての治療の負担は重く、かつ国にとっては医療費の高騰を招く一因ともなる。被る不利益は大きなものとなる。

欧米先進国では、子宮頸がん、乳がん、大腸がんを対象に多少のバラツキはあるが、検診受診年齢の上限は、60〜74歳として実施されている。
一方わが国では、上限の規定がない。

また、検診には必ずしも治療を必要としない、おとなしいがんを見つけてしまう「過剰診断」「過剰治療」の問題もある。

現役世代のがん検診が死亡率の減少を目指しているのに対し、高齢者は、QOL(生活の質)の維持が目標となるだろう。

これら様々な問題点について、日本対がん協会は昨年、本部内に新設した「がん検診研究部」で、じっくりと検討を続けており、解決につなげる提言をしたいとしている。

<インチョーより…>
Doctor’s Rules に…
あなたが生化学や生理学・解剖学について
沢山の知識を持っているからといって
人生や人間について豊富な知識があることを意味するものではない――
患者や他の人から学びなさい。
とありました。

つねに、最新の知見を学び…
「健康な人を、決して病人にしない」
病気の治療が、その人を不幸に陥れることのないように…
肝に命じて診療してまいります!ハイッ!

参考文献:
垣添忠生「難治がん発見・進む新技術」〜地球を読む〜読売新聞, 2017.2.5.