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2016年12月27日
人間ドックを受けられた方へ
人間ドックを受けられた方へ
日野原重明先生の著作からです。
参考になれば幸いです。

<「造病医学」に陥らないために>
一人ひとりに合った、新しい医療(Health-Guidance)が求められています。

高齢者が病気かあるいは病気でないかの判断基準に、
正常値といわれている診断基準を用いて、
高齢者に多くの病名を与えすぎるのではないか
ということが懸念されます。

見かけ上、健康な社会生活を送っている高齢者に、他項目の検査を行い、
高齢者を一般成人と同じ基準の検査値で評価した場合、
高齢者のほとんどは異常値を示していることがわかります。

そこで私は、高齢者の検査値を評価するためには、
現在用いられている正常値とか異常値の考え方をそのまま適応するのではなく、
一人ひとりの高齢者に合った認容値を想定して、
なるべく寛大な生活指導を行うことが、
医療者に求められる
ことではないかと思います。

激しい現役の活動から比較的楽な日常生活に移行した高齢者は、
身体的なデータが正常値から幾分外れていたとしても問題ありません。

それに一喜一憂することなく、
加齢に伴う自然の老化現象を受け入れて、
高齢者としての日常生活を支障なく、送れることができれば十分、
という実質的な健康意識をもってください


高齢者は、老化とともに循環器系、呼吸器系、泌尿器系、内分泌系、消化器系、感覚器系、神経系など、すべての系統に老化現象が現れ、器官の機能低下が起こります。

これは年齢とともに、器官の細胞数の減少や器官の萎縮が見られるのですから、
機能については、若者に比して下がるのは、やむを得ないことなのです。

高齢者は、その加齢とともに、血清タンパクの低下、血色素量(ヘモグロビン)の低下、血清クレアチニン値の上昇、耐糖能の低下、運動負荷による心電図上の異常が少しずつ現れます。
不完全な右脚ブロック(心臓の通過する電気刺激の伝導障害の一つ)などもかなりの頻度で出現します。
現代医学で採用されている正常値を基準にして、高齢者の機能低下や器官の萎縮を評価し、生活指導をする必要はない場合が多いと思います。

高齢者が、不安なく快適な日常を送れるような生活習慣を保つことが、その人のQ.O.L.(Quality of Life=生活の質)を高く保つことになります。
高齢者自身も、これらの高齢者の特性を理解しているかかりつけ医を、健康管理のパートナーに選ぶことをお勧めします。

<高齢者には「認容値」がある>
高齢者の健康評価には「認容値」(許容できる値、健康に差し支えない値)という概念を提唱したいと思います。
日本では近年、コンピューターの自動化システムによる総合健診センターが各地に設置され、病気の早期発見に寄与してきました。
また、1983年から老人保健法(高齢者の医療の確保に関する法律)が実施されて、
高齢者の健康診査が公費でまかなわれることになりましたので、
多くの高齢者が定期的に総合健診を受ける機会が増えています。

ところで、高齢者の検査値や検査所見は、どのような基準値で判断すれば良いのでしょうか。
今日普及している正常値は、健康度の高い青壮年者の検査値や診療所見を基準にして作成されており、これを正常値として健康度を評価しています。
したがって、高齢者はなんら体の異常を訴えることなく社会活動を送っていても、精密度の高い検査では正常値から外れる場合が少なくありません。

しかし、高齢者の諸検査値が正常から多少外れていても、従来の生活をそのまま続けることに、何の支障もない場合が多いのです。

20歳の青年が100mを10秒で走ったからといって、
70歳の高齢者は何も同じスピードで走らなくても良い
わけです。
100mを完走できればいいということです。

同じく、いわゆる正常値より若干外れた値であっても、
これを「認容値」と考えて、普通に生活すれば良いと思います。

その人の生活上、支障がなく、また生命への危険もなく、その程度の数値であれば、
これを害のない、または認容できる値として受け止め、
取り立てて病気と見なさない方が良いと思います。
若者と同じ値を正常値として、それで健康度を評価することは不適当と思われます。

高齢者には、高齢者としての正常域を設けて、健康を評価することを勧めるべきでしょう。

高齢者の検査値を経年的に記録し、平均寿命以上に、その高齢者が生き延びられた場合には、
あえて正常値に固執して様々の制限を加えるのではなく、
少なくともその値を「認容値」として採択しても良いのではないかと思うのです。

〜インチョ〜より〜
医学の進歩が、人間の病気を作り出し、不安にさせることのないように、
人々の安心を与え、健康長寿の素晴らしさを実感できる方向に
発展してゆくことを、心から願っていつも診療させて頂いております。

<参考文献>
日野原重明(2011)『いのちを育む−百歳の私から人生を楽しむための「道しるべ」』中央法規出版.