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2016年4月4日
人の悩みの相談に乗るときに…
人の悩みの相談に乗るときに…
話を聞くこと、聞く力、傾聴などが言われていますが、
樋野興夫先生は、がん哲学外来において、
さらに進んで「聞いてあげるだけでは不充分」と言われております。
現代コニュニケーションの一助になりましたら幸いです。

「がん哲学外来」での経験でわかったことのひとつに、
話を聞くだけでは、患者さんを元気にできないということがあります。

患者さんは、自分の言いたいことを一通り声に出してしゃべってしまえば、
心が洗われたようになり、気分がスッキリするようです。
もちろんそれだけでも意義のあることです。
患者さんにとって「聞き上手」な人の存在は、
一種の救いにもなります。

ところがこれだけでは根本的な解決には向かいません。

リセットはされても、心の中のシステム、考え方の枠組みが変わったわけではありません。

だから、大抵は、家に帰って、ある程度の時間が経てば、
また不安が頭をもたげ、同じようなことに悩み、
同じような苦しみを味わうようです。

すると、また、話を聞いてもらえるところへ出かけていく。
この繰り返しです。

だから、私は「がん哲学外来」で患者さんに言葉を伝えます。
その言葉を ”おみやげ” として持ち帰っていただくというスタンスです。

患者さんやその家族が家に帰ってから、
私の言ったことを思い出し、それを手がかりにして、
自分でいろいろな考えを組み立ててくれれば、
解決の糸口になるかもしれない。
そう思って、あれこれと言葉を探り、
外来の小一時間のあいだに伝えています。

この自分で考えを組み立てるという部分が
大切だと思っています。
人から与えられるのは、答えではなくて、
あくまでヒントであり、きっかけです。


そこから自分の頭で解決策を模索する方が、
本当の解決に結びつくのではないでしょうか。

どんな言葉が、患者さんの心に届くかは、その時になってみないとわかりません。
「この悩みにはこんなアドバイス」といったマニュアルを頭のなかに用意しているわけではないので、
その場その場でナマの勝負をしているようなものです。

また、私は、患者さんではなく人間と話しているという意識ですから、
病気に限定された個別的なアドバイスよりも、
人間全般にあてはまるような普遍的な言葉を、優先して選びます。

ここが「がん哲学外来」の「哲学」たる所以なのですが、
この普遍的で哲学的な言葉のほうが、患者さんの心にヒットする確率が高いようなのです。

ヒットしたかどうかは、表情を見ていればわかります。
表情にはウソも建前もありませんから。

樋野興夫著:「末期がん、その不安と怖れがなくなる日」(主婦の友新書, 2010/10/06)より

「暇げな風貌」を装い、がん患者さんの心に火を灯さんとする
樋野先生の真剣勝負で外来に望まれる”覚悟”を垣間見る思いです…