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2016年2月8日
乳がんと遺伝(1)
乳がんと遺伝(1)
今回は、ご質問の多い乳がんと遺伝について、勉強したので
「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」を紹介します。
参考にして頂けましたら幸いです。

Q 乳がんは遺伝しますか?

A 「乳がんの5〜10%は遺伝性」といわれていますが、
それを判断するには専門的な詳しい評価が必要です。

また、ご家族に乳がんや卵巣がんを発症した方がおられなくても、
患者さんご自身が若年乳がんや、両側性、多発性の乳がん、
男性乳がん、卵巣がんと乳がんの両方にかかったことがある場合には、
遺伝性乳がんの可能性があります。

一般的に、乳がんは食生活などの環境因子の影響が複雑に関与して発症すると考えられています。
乳がん患者さんのほとんど(90〜95%)は遺伝以外の環境因子が関与してしていることになります。
遺伝的に乳がんを発症しやすい体質を持っている方は、
乳がんを発症した人の5〜10%に過ぎない考えられています。


では、乳がん診療で、遺伝を考慮するのはなぜですか?

遺伝性の乳がんは、乳がん全体の中では少数にすぎませんが、
どのような患者さんで、遺伝性乳がんの可能性が考えられるのかという情報を知っておくことは、
患者さんやご家族の健康を管理する上で、有用だからです。

遺伝性乳がんの情報を知っておくことのメリットとしては、
例えば、ある患者さんの乳がんが遺伝性であると診断されると、
その患者さんの血縁者の方々にも、がんを発症しやすい体質が遺伝している可能性があることがわかります。
これらの血縁者の方々は、適切ながん検診を受けることで、
乳がんの早期発見、早期治療に結びつけることができます。

乳がんをすでに発症している患者さんご自身においても、
遺伝性乳がんであった場合には、
将来再び別の乳がんを発症する可能性も考慮して、
反対側の乳房の診察を含め、
より詳しく術後の検診を行うことが可能になります。

また、場合によっては、一般的には温存療法が可能であっても、
乳房を温存せずに、あえて乳房切除術を受ける選択肢もあることを提示することもあります。

ご自分の乳がんが遺伝性のものであるかもしれないという情報を知ることは、
必ずしも良いニュースではないかもしれません。
人によっては精神的に大きなショックを感じたり、
心理的に負担になったりすることもあります。

しかし、遺伝の可能性もある場合に、そのことを知っておくことは、
患者さんご自身だけでなく、血縁者の方々にとっても、
健康管理上有用なこともあります。

もし、そうした情報が得られた場合でも、有意義に、前向きに、
ご自身や大切なご家族のために、活かしていただきたいと思います。

遺伝性の乳がんは、どのような場合に疑われるか?

現在の「日本乳癌学会の診療ガイドライン」では、
現時点では、以下の項目(*1)に一つでも当てはまる場合には、
遺伝性の乳癌の可能性を考慮して、専門的に遺伝性乳がんに関する詳細な評価を行う診療の流れを示しています。

遺伝性の可能性がある程度高い場合には、乳癌の遺伝に関係する遺伝子の検査(*2)を一つの選択肢として提示して、
希望される患者さんには遺伝子検査を受けていただくこともできます(*3)。

ただし、以下の項目に当てはまるものがあったとしても、
専門的な評価や遺伝子検査の結果などによって、
「遺伝性乳がんの可能性は低い」と判断されるされる場合もありますので、必ずしも遺伝性乳がんであると決まるわけではありません。

*1 遺伝性乳がんを考慮すべき状況とは…
  1. 若年発症性乳がん(50歳以下が目安)
  2. トリプルネガティブ(ホルモン陰性・Her2陰性)乳がん
  3. 同一患者における2つの原発乳がん(両側性、同側でも多発性)
  4. 50歳以下の乳がん患者が、近親者(1〜3度)が1人以上
  5. 上皮性卵巣がんが、近親者に1人以上
  6. 乳がん、膵がん患者が近親者が2人以上
  7. 乳がんと以下の1つ以上の悪性疾患を併発している家族がいる乳がん患者
    膵がん、前立腺がん、肉腫、副腎皮質がん、脳腫瘍、子宮内膜がん、白血病、リンパ腫、甲状腺がん、びまん性胃がん、消化管過誤腫
  8. 卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん
  9. 男性乳がん
*2 ファルコバイオシステムズ バイオメディカル部
   遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)情報サイト
    http://www.falco-genetics.com/brca/

*3 栃木県立がんセンター がん予防・遺伝カウンセリング外来
   〒320-0834 栃木県宇都宮市陽南4-9-13
    028-658-5151(内線)3730 (担当 牧島)
    http://www.tcc.pref.tochigi.lg.jp/consultation/01-03-02.html

遺伝性乳がんは、血縁者全員に遺伝するわけではありません‼︎

現時点までの研究で、遺伝的に乳がんを発症しやすい体質を持っている多くの方で、
BRCA1、BRCA2遺伝子に変異が見られる人には、
乳がん、卵巣がんが発症しやすい傾向があることが分かっています。
但し、これらの遺伝子変異を持っていても全員が乳がんや卵巣がんを発症するわけではなく、
一生がんを発症しない人もいます。


BRCA1、BRCA2
のどちらかの変異を持つ女性場合の、生涯発症確率は、
乳がん  65〜74%(男性では6%)
卵巣がん BRCA1:39〜46% BRCA2:12〜20%


一般の日本人女性が生涯のうちに乳がんを発症するリスクは8%、卵巣がんは1%と言われています。
(BRCAgeneは親から子に男女関係なく50%の確率で伝わります)

NCCNガイドライン(アメリカ)では、
BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子に病的変異がある女性の生涯発症リスク推測値について、
乳がんは41-90%、卵巣がんは8-62%と記載されています。
生まれつきBRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に病的変異がある女性でも
全員が乳がんや卵巣がんになるわけではありません。

一般の日本人女性が生涯のうちに乳がんを発症するリスクは8%、卵巣がんは1%と言われています。
(BRCAgeneは親から子に男女関係なく50%の確率で伝わります)

NCCNガイドライン(アメリカ)では、
BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子に病的変異がある女性の生涯発症リスク推測値について、
乳がんは41-90%、卵巣がんは8-62%と記載されています。
生まれつきBRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に病的変異がある女性でも
全員が乳がんや卵巣がんになるわけではありません。

Q 家系内に乳がん患者さんがいる女性は、乳がん発症リスクが高くなりますか?

現時点で、世界中の多くをまとめた研究では、
親、子、姉妹の中に乳がん患者さんがいる女性は、いない女性に比べて、
2倍以上乳がんになりやすいことが分かりました。

祖母、孫、叔母、姪に乳がん患者さんがいる場合には、いない女性に比して
1.5倍の発症リスクでありことも分かっています。

乳がんを発症した親戚の数が多い場合には、
さらにリスクが高くなり、
これは、日本における研究でも同様な結果が得られています。

卵巣がんにかかった人が家系にいる場合でも、乳がん発症リスクが高くなる可能性がいわれております。
しかし、それ以外のがんについては、乳がん発症リスクが高くなるとの報告は現時点ではありません。

BRCA1/2 遺伝子変異乳がん卵巣がんの特徴
  1. 40歳未満の若い年齢において乳がんを発症する
  2. 家系内に複数の乳がん、卵巣がん患者が認められる
  3. 片方に乳がんを発症後、反対側の乳がんあるいは卵巣がんも発症する場合がある
このような条件を満たす乳がんは、全乳がんの5〜10%程度と考えられています。
日本人を対象とする多施設共同研究では、本人が乳がんにかかっていて、本人を含む第2度近親以内*4の親族に40歳未満で乳がんになった人がいる場合、両方の乳房にがんができた人や卵巣がんになった人がいる場合にはBRCA1/BRCA2 遺伝子変異の陽性率は38〜46%でした(表2)。しかし、遺伝子が父方から受け継がれている場合や女性の血縁者が少ない場合などには家族歴がはっきりしないこともありますので、遺伝的リスクの正確な評価についてはがんの遺伝カウンセリングを受けられることをお勧めします。
遺伝子検査は、自費診療として一部の施設で行われていますが、十分な遺伝カウンセリングに基づいて提供されるべきものです。また、BRCA1/BCRA2遺伝子変異でも、臨床的な意義が不明(発症リスクとの関連が不明)なものもあり、日本人特有の変異がある可能性や、環境要因などの違いにより実際の発症リスクが異なる可能性も指摘されています。
(下線部を追記しました。2013年5月15日)


*4 第2度近親内とは、あなたから見た場合にきょうだい、父母から祖父母、おじ、おば、孫までの範囲の血縁者を指します。

表2 乳がん発症者の家族歴とBRCA1/BRCA2 遺伝子変異の関係

家族歴家族歴の特徴BRCA1/2 遺伝子の
変異陽性率 
第2度近親以内に
40才未満の乳がん 
あり
なし
12/26名(46.1%)
22/96名(22.9%) 
第2度近親以内と従姉妹に
40才未満の乳がん 
あり
なし
14/29名(48.2%)
20/93名(21.5%) 
第2度近親以内に両側性乳がん
あるいは卵巣がん
あり
なし
23/60名(38.3%)
11/62名(17.7%) 
Sugano K. et al. Cross-sectional analysis of germline BRCA1 and BRCA2 mutations in Japanese patients suspected of hereditary breast/ovarian carcinoma. Cancer Sci 99:1967-1976, 2008.


これらBRCA 遺伝子変異が陽性の場合、男性では乳がんのほか、前立腺がんになるリスクも高いといわれています。
米国ではBRCA1/BRCA2 の遺伝子検査が普及しており、
変異陽性者に対しては、これらのがんの検診に加えて、
薬による予防や、乳腺や卵巣・卵管の予防的切除が行われる場合もあります。
一方、わが国では、現時点で健康な(未発症の)乳房を切除することについて統一された指針はなく、
乳がん発症の予防を目的とする健康な乳房の切除は保険給付の対象とはなっていません(2013年5月15日追記)。

乳がんの再発予防を目的とした卵巣切除術について、日本でも外科的内分泌療法として以前は実施されていましたが、
1981年に抗エストロゲン剤であるタモキシフェンが保険承認されてからは、薬物療法が主体となっています。
欧米の研究では、どちらの治療もBRCA1/2が関与する対側乳がん発症の予防に有用であることが報告されています。
予防的卵巣卵管切除術は卵巣がんの発症を予防する効果も期待されますが、
術後に腹膜がんを発症するケースもあることが報告されています。
卵巣がん発症の予防について、その他に経口避妊薬の服用が有用であったとする報告もあります。
未発症者に対するタモキシフェン投与あるいは予防的卵巣卵管切除術は保険給付の対象とはなっていません(2013年5月21日追記)。


参考文献
1 日本乳癌学会編:患者さんのための乳癌診療ガイドライン(2014年版)
2 ファルコバイオシステムズ バイオメディカル部
  遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)情報サイトhttp://www.falco-genetics.com/brca/

〜院長よりコメント〜
遺伝性乳がんに関しては、まだ未知の知見も数多くあり“controvertial ”な部分も多く、
今後、新たな知見・予防法など出てくると思われます。
現時点での情報を、冷静に、前向きに、賢く取り入れていく必要があると思います。
どのような遺伝情報が出ようとも、食養生、運動、考え方などの
生活習慣やメンタルマネジメントが重要であることは変わりありません。

Survivors やFamilyのEverybodyの“Peace of Minds”のおActにStand てましたら Happy です(ルー語)。
(がん体験者さんやご家族のみなさまの安心のお役に立てましたら幸いです,日本語訳)