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2016年1月5日
がん検診の最近の動向について
がん検診の最近の動向について
ちょっぴり勉強したので、載せておきますね。参考にしていただけましたら幸いです。

まず、がん検診には、対策型と任意型があります。
対策型がん検診:税金をつぎ込んでもやるような公益性の高い検診のことです。
任意型がん検診:エビデンスが少なくても「自分でお金を出してでもいいから受けたい」という個人責任でやってもらうもの。

今回は、公益性の高い「対策型検診」の方のお話が中心になります。

対策型検診は「公益性」を重視
国ががん検診を導入する際に判断する基本的な条件

  1. がんになる人が多く、死亡の重大な原因であること。何万に1人しか出ないような非常にまれながんを見つけるために検診をするとなると、公益性は追及できなくなってしまう。

  2. 検診を行うことによって、そのがんによる死亡が確実に減少すること。例えば、韓国では甲状腺がんの検診を導入し、非常に多くのがんが見つかっていますが、罹患率は毎年上がるのに、死亡率については全く変化がないため、検診による成果があまり出てないのではないかと言われています。

  3. がん検診を行う方法があること。

  4. 検査が安全であること。

  5. 検査の精度がある程度高いこと。

  6. 見つかったものに対してはきちんと治療法があること。

これらをすべて勘案して、メリットとデメリットを総合的に見て、メリットの方が大きいという場合に初めて対策型検診として導入されると考えている。

広くがん検診をうけてもらうためにしていること、これからやろうとしていること
例えば平成21年ごろから無料クーポンを配布するなどしたり、電話で受診をお勧めしたりする「コール・リコール」もしています。
とくに、1次検査で精密検査が必要という結果を放置している方がかなりおられること(う〜ん、うちにもときどきいらしゃるなぁ)。
そういう方に対して、電話で受診をお勧めするということをやっていますし、来年度もやろうと思っています。
新たな支援事業として、例えば、ご本人の希望などを聞いて予約や受診日の日程調整までやってもらうということも、要求しようと思っています(このキメ細やかさが大事なんだね〜)。
特定健診(いわゆるメタボ検診)は受診率が比較的高いので、メタボ検診のときお医者さんからがん検診も勧めてもらうようにやっていこうと思っています。

受診率を上げるためにどんなことができるのか
Q.お金を出すというよりは、ノウハウの面で工夫をすべきでは?

A.もっとメリット・デメリットがハッキリわかるような、例えば保険を変えるとか、必ず受けないといけない義務化を打ち出すとか 。
がん検診でがんが見つかった場合は、自己負担が安くなるとか…住民に(がんになると大変だという)危機感が乏しいのだから、インセンティブ的なものが何か必要ではないか。
インセンティブを働かせるために、企業などの保険者に健康づくりの活動をしたら、その方になんらかのメリットを与えられるという仕組みを考えています。
(垣添・対がん協会会長)未受診者に対する対策がものすごく重要で、それは、単にポスターを出すとか、講演会をやるとか、そんなことだけでは、とうてい人は動かないと思います。
対がん協会Gは年間1100万人の検診を行って、13,000 人くらいのがんを発見している、しかも精度の高い検診もやっておられる。
このビックデータを解析し、活用していくことはすごく大事なこと。
対がん協会としては、リスク別の層別を入れるとか、かなり抜本的に考えを変えていかないといけないと思います。

広く多くの人に検診を受けていただくために〜費用対効果の高い検診へ〜
子宮頸がんの場合:ドイツ、イギリス、アメリカはどんどん死亡率が下がってきているのに、残念ながら日本だけは、罹患率も死亡率も上昇してきています。
とくに35歳を中心にした層の死亡率が上がっている、つまり30代で亡くなっている人が増えてきている。
日本だけが、若年者の罹患率、死亡率が増加してきたのはなぜか。
一つは検診受診率が37.7%と低いこと。もう一つは、、若い層の受診率が低いこと。この二つが原因だと思っています。
もう一つ、受診者層が高齢化し固定化してきて、受診した人ががんになる確率はほとんどないが、それを証明することができない、ということもあります。
子宮頸がん検診のターゲットのは、20代、30代、40代のはずですが、実際に検診を受けているのは60代が中心。だから発見率が低い。
がんにならない人が、一生懸命に検診を受けていた、ということです。60代を中心とした人たちを見ると、細胞診もHPVも陰性が98%でした。
100人中の98%はがんにならないという人たちが、毎年、2年ごとという感じで受けている。
(中略)「こんな無駄な住民検診を漫然と思考していたらいけない」と一生懸命に言ってきました。
発見率も低ければ、高齢化・固定化していて税金の無駄使いになっている。
その危機的状況で、浸潤がんがどんどん増えて、高医療費になり、少子化も助長しています。
今後は、今までがん検診を受けたことのない人への働きかけがより必要であると思います。
従来のがん検診は、胃がんや乳がんなど、年齢や性で規定されてきた。
今後場合によっては、リスク要因、例えば、ピロリ菌の感染、喫煙状況、パピローマウイルスの感染状況によって、
検診を受けるか否かを振り分けることも必要になってくるかもしれません。

利益・不利益バランスをどう考えるか
がん検診の利益は、まずは、死亡率の減少(但し、もとになる死亡率が大きいがんでないと費用対効果は小さくなってしまいます)、
次に、浸潤がんの罹患減少、他に、低侵襲の治療で、QOLを維持したり、治療にかかる経済的負担が軽くなるなどのことも考えられます。

不利益を考えるのは、非常に複雑で、偽陽性(本来がんでないものもひっかけてしまうこと)、過剰診断、合併症、あるいは放射線被曝などによる影響などが考えられます。
偽陽性は、若年者において一過性の病変(つまり消えてなくなってしまうもの)をひっかけてしまうもので、検診回数に比例して増大します。
過剰診断というのは、非常に成長速度が遅いがんを診断してしまった場合に、その人の余命と比べて、臨床的に症状を呈さないようなものまで診断・治療してしまうというものです。
とくに、高齢者において、過剰診断というのが起こりがちです。合併症は高齢者に多いということがあるし、放射性被曝などは若年者の方が大きいということになると思います。

当院では、今まで科学的エビデンスと培ってきたがん診療経験に基づき、ご高齢の方は過剰診断にならないよう、
若年者は、僅かな初期の病変を見落とさない観察眼と同時に、侵襲的検査・治療のデメリットを勘案して診療に当たらせて頂いております。
個人個人に即したきめ細やかな対応が可能な「任意検診」のメリットと考えております。

実は、がん罹患率は、年々減少している!
(私も、検診と精査を両方の診療経験からうすうす感じていました。ただし、乳がん・子宮頸がんは例外ですッ)

これはがん罹患率が年々減っていることを示すグラフです。
レベル的にいうと、大腸がんにしても、肺がんにしても、40歳台の罹患率はかなり低レベルです。
40歳台は罹患率が低いということで、胃がん検診のレベル幅を上げるということであれば、同時に大腸がん、肺がんについても同様の検討が必要になってくると思います。
現に、US Preventive Task Force の推奨グレードでは、子宮頸がんの65歳以上や大腸がん検診の85歳以上にD(推奨グレードD:不利益が利益を上回るのでやめた方がいい)という判断を行っているのと同レベルで、
21歳未満に関してはやらない方がいいという判断を下しています。
年齢で推奨グレードを変えるというのは、今後日本でもやっていくべきことと思います。

がん検診はやればやるほどいいわけではない!〜検診間隔をどうするかという問題〜 
検診はやればやるほど本人や行政的なメリットがある、と思いがちですけれども、一方でデメリットもあるのです。
メリットとデメリットのバランス、総合的な判断が必要だと思います。
例えば、同じ人が毎年受けるより、2年に1回として、その2年間の間に新しい人が受けた方が場合によってはいい。
それによって受診率が上がった方がいいという発想もあるという議論も検討会はされていたと思います。
(略)総合的に考えて胃がん検診は2年に1回という結論が出たところです。
例えば、(ある種の)がんの発見率が非常に下がってきたときに、それでも対策型として検診をやるというとき、実はやったところで陰性になる方が大多数なわけです。
自治体なり国が「毎年やってください」といったら、大多数の本当はやらなくてもいい方々もわざわざ検査会場に行く、
それに対してお金がかかる、そのお金は税金でみる、そういう意味のでのデメリットも実はあるわけですね。
がん検診はとにかくやればやるほどいい、というイメージが起きがちですけれども、必ずしもそうではなく、ある程度効率性が求められている。
とくに対策型の場合は税金を使うので、最も効率的なのはどの対象年齢、あるいは毎年なのか隔年なのかという判断が必要ではないかと思っています。
(厚生労働省健康局がん対策課長正林督章氏/島根県ん立中央病院副院長岩成治氏らのお話から)

参考文献:2015年度がん征圧全国大会記念シンポジウム〜より精度の高い検診をめざして〜(対がん協会報631号増刊/平成27年12月)


とても、勉強になりました。
皆さんは、お忙しいのでこんな長い文章、読まなくて大丈夫ですよ〜。
ひまな私が代わりに学んで、皆様に還元しますからね〜。