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2016年1月12日
インフルエンザの最新診療と今後の動向
今年は暖冬の影響で、インフルエンザの流行が見られていませんが、
日経メディカル(Jun, 2016)に、「今シーズンのインフルエンザ診療」の要点が
よく書いてありましたので、ご紹介します。

昨シーズンの流行から
ここでは、主として日本臨床内科医会(日臨内)の研究データを基に、
直近の昨シーズンを中心として、最近の流行状況、
インフルエンザワクチン及び抗インフルエンザ薬のノイラミラーゼ(NA)阻害薬の有効性を振り返り、
今シーズンの対応を考えてみたい。2009年のいわゆる新型インフルエンザを別とすれば、
2010/11以降で比較すると、昨シーズンは、A(香港)型の開始もピーク(1/18)も例年より、2週間程度早く、
正月明けに流行が一気に広がったが、ピーク後は流行の消退も早かった。一方、B型に大きな流行はみられなかった。
2013/14シーズンは、同時にA型とB型の混合流行がみられたのが特徴でした。
特にB型が、A型に匹敵するくらい、小児・若年者を中心に流行した(19歳以下が約6割を占めた)。
対して、昨シーズンは、B型の流行は少なく、かつ成人患者が多かった(逆に20歳以上が約7割)。

ワクチンの効果は?
毎年、日臨内で実施しているインフルエンザ発症の予防に関する前向き試験において、
各年齢群において、インフルエンザの発症率が、ワクチン接種群で有意に低くなっており、
臨床的には、ワクチンが有効と考えられた。
一方、抗体価(HI)をA香港型罹患者で見ると、
昨シーズンは、罹患時に既に抗体価が40倍以上の人がみられており、
ワクチン株と流行株が若干ずれていた(ミスマッチ)可能性が考えられる。
しかし、回復期には殆どの患者で抗体価が上昇しているケースもあり、
ワクチンに一定の効果はあったと考えられる。

ワクチンの国内外の動向
今シーズンは、B型の株を増やし、3価から4価の不活化スプリットワクチンに変更されるという転換期を迎えたが、
B型は従来、A型よりもワクチンの有効性の低さが指摘され、かつ昨シーズンの流行もわずかで、
今シーズンのワクチンが4価になったことで、どの程度ワクチンの有効性があるのか、
今後の検証が必要と考えられる。

諸外国でも、日本と同様、不活化スプリットワクチンが中心であるが、
米国ではワクチンの種類が多様性に富んでいる。
より少量(0.1mL)で抗体誘導に優れた皮内接種ワクチン、
抗体上昇に乏しい高齢者を対象とした高力価ワクチンがあったり、
さらに、細胞培養ワクチン、リコンビナントワクチンなども導入されている。
経鼻生ワクチン(FluMist®)(対象: 2〜49歳)も既に長年使用されている。
日本でも、治験や申請の準備が進められており、
近い将来、複数のワクチンの中から、個々人の年齢や状況、
投与経路などを考慮して選択できる時代が来ると考えられる。

インフルエンザ治療薬について
現在、日本では、抗インフルエンザ薬(NA阻害薬)は、4剤が使用可能で、諸外国よりも恵まれた環境にあります。
以前、タミフルが供給不足におちいった際に投与された、パーキンソン治療薬であったアマンタジンは、
A(香港/H1pdm09)型に耐性化が高いため、現在は推奨されていない。
ファビピラビル(アビガン錠®)は、適応承認されているが、
むしろより重症で治療法の確立されていないエボラ出血熱に対する有効性が期待されている。

タミフル・イナビルなどのNA阻害薬投与による解熱時間は、どの治療薬も同等で、
A型で25〜28時間(約1日)程度、B型で37〜46時間(約2日)程度と高い有効性が確認された。
使い分けの傾向は、
小児:ドライシロップのあるタミフル、
Teen-age(10代):リレンザ・イナビル
20代の多忙な成人:イナビル・タミフル
高齢者・入院患者などハイリスク患者:ラピアクタ
などが選ばれている。

耐性化の現状
タミフルに対する耐性ウイルスなどが、近年懸念されており、ウイルスの変異株も確認されている。
しかし現時点で臨床では、まだそれほど問題にはなっていないと考えられるが、さらなる検討が必要である

インフルエンザ診療のこれから
今年は、温暖化の影響で流行開始が遅れているが、
海外においては、国内であまり流行が見られなかった型も流行しており注意が必要である。

ただ現時点では、いずれの型も耐性ウイルスの頻度は低く、
抗インフルエンザ薬の有効性は依然として保たれている。
ワクチンも今年から国内初4価ワクチンが導入され、
さらに早ければ来シーズンにも新しいワクチンが導入される可能性があるなど、
一大転換期を迎えている。

参考文献:河合直樹, 池松秀之 今シーズンのインフルエンザ診療の要点.日経メディカル p061-p66. 2016年1月号